曜日の順番はなぜ「月火水木金土日」?古代天文学から現代までの歴史を解説

擬人化した曜日たち

「月火水木金土日」という曜日の並びは、日本人にとってはごく当たり前のものとして日常に根づいている。しかし、改めてその順番に注目すると、なぜこの並びになっているのかと疑問を抱く人も多いだろう。たとえば、「月」から始まり「日」で終わるという構成には、どのような意味や由来があるのか。あるいは、なぜ英語では「Sunday(太陽の日)」や「Monday(月の日)」といった名前なのに、日本語では「日曜日」や「月曜日」が最後に並んでいるのか。

このような曜日の順番は、単なる語呂合わせや文化的習慣によるものではない。実は、古代の天文学や宗教観、さらには西洋から伝わった思想と東洋独自の哲学とが複雑に絡み合っている。この記事では、曜日の名前とその順番が形成された歴史的背景を紐解きながら、その謎に迫っていく。

目次

曜日の名前はどのように決まったのか

現在私たちが使っている「月曜日」「火曜日」などの曜日名は、単なる記号ではなく、天体や神話、思想に根ざした意味を持っている。そもそも「曜日」という考え方自体は、紀元前の古代メソポタミア文明にまでさかのぼるとされる。特に重要なのは、「太陽」「月」「火星」「水星」「木星」「金星」「土星」といった、肉眼で観察できる七つの天体である。

これらの天体は、古代人にとって神秘的な存在であり、宗教的・占星術的な意味を持っていた。たとえば、ローマ神話ではそれぞれの天体に神が割り当てられており、曜日はそれらの神々に捧げられる日として設けられていた。このようにして形成された曜日の体系が、後の「七曜制」の基盤となった。

日本では、この七曜制が中国を経て平安時代に伝わったとされる。中国では陰陽五行説と結びつけられ、それぞれの曜日が五行の「火・水・木・金・土」と天体の「日・月」と対応づけられた。これにより、「日・月・火・水・木・金・土」という語順が成立し、やがて明治時代に入って現在のような呼称が正式に採用されることとなった。

つまり、曜日の名前は単なる呼称ではなく、古代の天体観測と宗教的象徴、そして哲学思想の融合によって形づくられたものであり、その背景には深い歴史的意義が込められている。

「月火水木金土日」の順番のルーツは古代ローマにあった

現在の「月火水木金土日」という曜日の順番は、実は古代ローマにおける七曜制の思想に由来している。この制度は、天体の運行と時間の支配に関する考え方から発展したもので、当時の天文学と占星術の影響を色濃く反映していた。

ローマ式七曜制と惑星の並び

古代ローマでは、1日を24時間に分け、各時間帯を七つの天体が順に支配するという「時刻支配」の概念が存在した。これに基づき、1日の最初の時間帯を支配する惑星によって、その日の名前が決められた。たとえば、土星が1時間目を支配する日は「土曜日(Saturni dies)」、太陽が支配する日は「日曜日(Solis dies)」という具合である。

このサイクルは、順に「土星→太陽→月→火星→水星→木星→金星→土星…」と繰り返され、各曜日に特定の惑星が割り当てられていった。この順序が一週間という単位に落とし込まれ、曜日制度が成立した。

バビロニア天文学と時刻支配の概念

この発想の根底には、さらに古いバビロニアの天文学がある。バビロニアでは、天体の運行を観測し、それをもとに時間や暦を管理する体系が発展していた。七曜制において用いられた七つの天体も、いずれも肉眼で観察できる天体であり、天文学的な根拠と神秘的な象徴の両面を持ち合わせていた。

日本への伝来と語順の定着

このローマ式七曜制はヘレニズム文化を通じて東方へ広まり、最終的に中国に伝来し、そこから日本にも入ってきた。中国では陰陽五行思想と結びつき、各曜日が五行の元素に対応づけられた結果、「日→月→火→水→木→金→土」という語順が定着した。この語順は、惑星の名称と五行の対応を反映したものであり、現在の日本語の曜日名称の順番にも直結している。

現代の「曜日」の順番が定着した歴史的背景

「月火水木金土日」という曜日の順番が日本において一般的となったのは、古代から近代に至るまでの複数の思想や制度の影響によるものである。天体に基づく西洋起源の七曜制が、東洋独自の思想や暦法と融合しながら受容された過程で、現在の順番が定着した。

仏教・陰陽五行との融合

七曜制が中国に伝わると、当時の主流思想であった陰陽五行説と結びついた。これは、自然界のすべてを「木・火・土・金・水」の五元素に分類し、方角や季節、人体、そして時間にまで適用する哲学体系である。五行にそれぞれの惑星が対応づけられたことで、曜日も「火星=火曜日」「水星=水曜日」「木星=木曜日」「金星=金曜日」「土星=土曜日」と定まった。

残る太陽(日)と月は、五行の外にある特別な存在として「日曜日」「月曜日」に割り当てられた。これにより、「日・月・火・水・木・金・土」の順が哲学的・象徴的な整合性をもって一貫性ある体系として認識されるようになった。

和暦における曜日と暦の役割

日本に七曜制が伝来したのは飛鳥時代または奈良時代とされるが、一般的な暦として定着するのは平安時代以降である。特に陰陽道が朝廷や寺社に取り入れられるようになると、吉凶を占うための暦に曜日が導入され、民間にも広がっていった。

明治時代に入り、西洋式の暦法である太陽暦が導入されると、曜日制度も法的・制度的に整備された。このとき、中国伝来の語順がそのまま採用され、現在の「月火水木金土日」の順番が公式のものとして定着したのである。

他国の曜日順との比較:同じ?違う?

「月火水木金土日」という曜日の順番は日本においては標準的だが、世界に目を向けると、必ずしも同じ順番が使われているわけではない。曜日の名称や並びには、その国や地域の宗教・文化・歴史が深く関係しており、比較することで日本の曜日観の特異性や共通性が浮かび上がる。

英語・フランス語圏との共通点

英語圏やフランス語圏では、日本と同様に七曜制が使われている。曜日の語源をたどると、各曜日は主にローマ神話やゲルマン神話の神々に由来しており、それぞれ特定の天体と結びついている。たとえば、「Monday(月曜日)」はMoon(月)、「Tuesday(火曜日)」はMars(火星)に対応する。

順番についても、文化や文脈により「Sunday(日曜日)」を週の始まりとする場合と、「Monday(月曜日)」を始まりとする場合がある。欧州連合(EU)では国際標準化機構(ISO 8601)に準拠し、月曜日始まりが一般的である。一方、アメリカでは日曜日が週の始まりと見なされることが多い。

イスラム圏・中国の曜日体系との違い

イスラム諸国では、七曜制に対応する曜日名称は存在するが、その内容はやや異なる。たとえば、金曜日は「ジュムア(集会の日)」と呼ばれ、宗教的に特別な意味を持つ。そのため、週の休息日は金曜日や金・土の組み合わせである国が多い。また、曜日の名前は数字に由来しており、「第1日」「第2日」といった形で表現されることもある。

一方、中国では古くから七曜制は存在したが、曜日名の使用は限定的で、干支や十干十二支、または「一週一再」と呼ばれる制度の方が優勢だった歴史もある。近代に入ってからは日本と似た語順と名称が用いられるようになったが、これは日本の影響による部分も大きい。

なぜ「日曜日」が週の終わりになっているのか?

「月火水木金土日」という並びでは、日曜日が週の終わりに位置づけられているが、世界的には日曜日を週の始まりとする文化も存在する。なぜ日本では日曜日が最後に置かれているのかは、宗教的伝統と近代以降の暦制度の変化が大きく関係している。

キリスト教の影響と西洋暦の変遷

キリスト教圏では、聖書の創世記における「神が7日目に休んだ」という記述に由来し、日曜日は安息日とされてきた。特にカトリックやプロテスタントの多くの国では、日曜日を週の始まりと位置づけ、その日を神に捧げる日・休息の日として過ごす文化が根付いている。そのため、西洋のカレンダーでは日曜日が先頭に記載されるのが一般的である。

しかし、20世紀に入ると労働と休息のバランスを重視する近代的な労働観のもとで、月曜日を「労働週の開始日」、日曜日を「週末の終わり=休日」と位置づける考え方が広まっていった。これが現在のビジネスや学校の週単位のスケジュールの基盤となっている。

日本における日曜の位置づけ

日本では、明治時代に太陽暦(グレゴリオ暦)を採用する際、西洋式の曜日制度を導入し、それを日本語に訳して「月火水木金土日」とした。この語順は中国の五行に対応した惑星順に由来しており、その中で「日」は最も象徴的な存在として最後に置かれた。

また、戦後の高度経済成長期以降、日本でも「週末=土日休み」という労働慣行が広まり、日曜日は明確に週の終わりとして定着した。結果的に、日本では日曜日は「週の締めくくり」であり、「家族と過ごす日」「リセットの日」という感覚が強く根づいている。

まとめ:曜日の順番は偶然ではなく、歴史と文化が織りなす必然

「月火水木金土日」という曜日の順番は、単なる慣習や語感によって決まったわけではない。その背景には、古代バビロニアの天文学、ローマ神話に基づく惑星信仰、そして中国の陰陽五行思想といった、異なる文化圏の思想や宗教観が複雑に絡み合っている。

これらが時間とともに融合し、日本では中国経由で七曜制が伝来。明治時代の暦改革により、現在の形で制度として整備された。さらに、近代以降の働き方や生活様式の変化に伴って、「日曜日=週の終わり」という感覚が定着し、文化的にも定番化した。

つまり、「曜日の順番」は人類の天体観測と宗教、哲学、政治制度、生活文化が交差して形成された、歴史と思想の結晶とも言える。日常生活に何気なく溶け込んでいるこの順番も、その背後にある壮大な歴史に思いを巡らせると、より一層の奥深さを感じられるだろう。

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