地球は丸い形をしていると、多くの人が知識として理解しています。ところが、それを意識したときにふと湧いてくるのが「ではなぜ私たちは地球から落ちてしまわないのか?」という疑問です。特に「地球の裏側に住んでいる人は逆さまに立っているのでは?」と感じた経験がある方も少なくないはずです。
このような疑問は、重力や地球の構造について正しく理解することで明快に説明できます。本記事では、地球が丸いにもかかわらず私たちが落ちない理由を、重力のはたらきや地球の形状とあわせて、やさしく丁寧に解説していきます。
地球の形は本当に「丸い」のか
「地球は丸い」と一般的に言われますが、実際のところ、完全な球体ではありません。地球は「回転楕円体」と呼ばれる形をしており、赤道部分がわずかにふくらみ、極の部分がわずかに平らになっています。この形は、地球が自転していることによって生じた遠心力の影響によるものです。
しかし、宇宙から地球を見たときにはほぼ球体に見えるため、日常的な理解として「丸い」と表現されることが多いのです。地球の半径はおおよそ6,371kmで、表面は陸地と海洋で覆われ、地球のあらゆる場所に「重力」が作用しています。
ここで重要なのは、「地球上のすべての場所で重力が地球の中心に向かって働いている」という点です。この事実こそが、地球が丸くても人間が落ちない理由を理解する上での前提になります。私たちが「地面に立つ」という感覚自体が、重力によって地球の中心に引っ張られていることを意味しているのです。
なぜ私たちは地球から落ちないのか
私たちが地球から落ちない最大の理由は、「重力」が常に地球の中心に向かって働いているからです。重力とは、質量を持つ物体同士が互いに引き合う力であり、地球のように巨大な質量を持つ天体は、その重力によって地表のすべてのものを中心方向へと引き寄せています。
地球のどの地点に立っていても、重力はその人を地球の中心に向けて引っ張っています。私たちが「下」と感じている方向は、物理的には常に地球の中心を向いているため、地球の裏側に立っている人もまた、その場所にしっかりと立っていることができるのです。
この「重力による吸着力」が、地表に存在するあらゆるものを地球にとどめており、大気も水も人間も、すべてがこの力に従って地球表面に張りついています。逆に言えば、地球の重力がなければ、私たちは空中に浮かんでしまい、宇宙空間へと放り出されてしまうことになるでしょう。
「地球の裏側の人は逆さまに立っている?」の真相
「地球の裏側にいる人は逆さまに立っているのではないか?」という疑問は、地球が球体であることを意識したときに多くの人が抱く発想です。しかし、実際には「逆さま」という表現自体が、重力の方向を基準にした地上の感覚に過ぎません。
地球上のすべての場所で、重力は地球の中心に向かって働いています。つまり、どこに立っていても、その人にとっての「下」は常に地球の中心方向であり、「上」はその反対側です。このため、地球の裏側にいる人から見れば、自分が「正しく立っている」と感じるのは当然のことです。
逆に、仮に宇宙から地球全体を見た場合には、人々が地球の表面に張りつくようにして、全方位に向かって「外向き」に立っているように見えるかもしれません。しかしそれもまた観察者の立場によるものであり、各人にとっては常に「足元が地面、頭が空」という空間認識の中で生活しています。
したがって、「逆さまに立っている」という見方は、相対的な表現に過ぎず、地球の重力という物理法則の中では、どの地点でもすべての人が「正しく」立っているといえるのです。
宇宙に行くと「落ちる」感覚はどうなる?
地球上では重力によってしっかりと地面に引き寄せられている私たちですが、宇宙に出るとその感覚は一変します。宇宙空間では「無重力状態(厳密には微小重力状態)」になるため、地上のように「下に引っ張られる」という感覚は失われます。
では、宇宙飛行士は地球から「落ちていない」のでしょうか? 実は、国際宇宙ステーション(ISS)などの人工衛星は、常に地球に向かって「落ち続けて」いる状態にあります。ただし、同時に地球の周囲を非常に高速(およそ時速28,000km)で水平に移動しているため、落ちながらも地球の表面にぶつかることなく、地球の周囲を回り続けているのです。これが「軌道運動」と呼ばれる現象です。
この状態では、地球の重力は確かに存在しており、宇宙飛行士や機材もすべてその影響下にあります。しかし、常に自由落下しているため、内部の人間にとっては体がふわふわと浮いているように感じられます。これが、いわゆる「無重力」の正体です。
つまり、宇宙に行くと「落ちているけれど落ちているように感じない」という不思議な状態になるのです。この現象もまた、地球の重力がどこまで及んでいるか、そしてそれがどのように作用しているかを理解する鍵となります。
地球が回転しているのに吹き飛ばされないのはなぜ?
地球は1日に1回、自転軸を中心に回転しています。赤道上ではその速度は時速約1,670kmにも達します。これほどの速さで回っているのなら、本来であれば私たちは遠心力によって吹き飛ばされてしまいそうに思えるかもしれません。
実際、地球の自転によって遠心力は発生していますが、それ以上に強力な力が働いています。それが、地球の重力です。遠心力は、地球の自転によって生じる外向きの力で、特に赤道付近で強くなります。しかし、この遠心力は重力のごく一部に過ぎず、重力の95%以上を相殺するには至りません。
たとえば、赤道付近では遠心力の影響で体重がほんのわずか(約0.3%)軽くなる程度ですが、それでもなお重力のほうが圧倒的に勝っているため、私たちは地表にとどまっていられるのです。
また、私たち自身も地球と一体となって回転しているため、自転を感じることもなく、地表から吹き飛ばされることもありません。地球上で安定して生活できるのは、重力と遠心力が自然の中で絶妙にバランスを取っているからなのです。
まとめ:地球に「落ちない」のではなく「引っ張られている」
地球が丸いにもかかわらず、私たちが地表から落ちることなく生活できているのは、重力という自然の力が常に地球の中心に向かって働いているからです。この重力は、地球のどの地点においても、あらゆるものを中心に向けて引き寄せており、私たちが「地面に立っている」と感じるのも、実際には地球に引っ張られている状態にほかなりません。
地球の裏側の人も「逆さま」に立っているわけではなく、それぞれの場所で重力の方向が「下」であるため、誰にとっても自然な感覚で立っているのです。また、宇宙空間では重力の影響が小さくなり、無重力のような状態が生まれますが、それもまた地球の重力による「落下運動」の延長線上にあります。
地球の自転によって発生する遠心力さえも、重力によってしっかりと打ち消されており、私たちはこの見えない力のバランスの中で、安定して暮らしています。つまり、私たちが地球から「落ちない」のではなく、「重力によって引き寄せられている」という事実こそが、地球という星に立つことができる本当の理由なのです。